物売りの少年と傷痍軍人

物売りの少年に間違われた

 

父に連れて行ってもらった、映画「ゴジラ」を観た後

近くに、父の知り合いの飲み屋の店があった。

挨拶して来るから、少し待っていなさい。

そう言われたので、店の前の道路で待っていた。

 

映画を観に行く前に、書店に立ち寄って、

参考書を沢山、買った。

本を包装紙に包んであったので

四角になっていた。

 

その包装された、四角になった本を

胸の所に持って立っていた。

 

すると、酔っ払いの、おじさん達が通って行った。

その中の、一人の、おじさんが、私のもとに引き返して来て

「いくら?買ってやるよ」

と言った。

 

「え?何ですか。これは参考書だけど」

「あ、ごめん、ごめんね」

と言って去って行った。

 

挨拶が終わり、父が私のもとに帰って来た時に

「さっき、変な酔っ払いが来て、

いくら?買ってあげようといわれた。

あれ何?」

 

そう質問すると

「戦争が終わった後、子供が路地に立って

お菓子とかタバコとか売ってた。

それに間違われたんだろう」と言った。

 

あの頃は子供だったので、歴史を知らないから

「え~、そんなのに、間違われたの~」と思った。

 

次の話は

母の買い物に、父と私も付いて行った時

商店街の外れに

アコーディオンを弾いている男性がいた。

 

↓ ネットで拾った画像

 

 

その人は、白装束ではなかった。

軍服だった。

両足の膝から先が、無かった。

前には、丸い皿というか、そんな物が置いてあった。

 

通り過ぎて行く人の中に、何人かは

小銭を、その皿に、ポンっと入れて行った。

 

お父さん、あれは何?と質問する。

父が

あの人は、戦争に行って、爆弾で足が無くなった人

そう話した。

 

ボクも、お金を入れて来たいと言うと

父は、もういいから行くよ、と言った。

私が、どうしても、お金を入れて来たいと言うと

10円玉をくれた。

 

私は、その傷痍軍人の人の所へ行き

その人の前に、しゃがんで、10円玉を皿に入れた。

 

すると、その傷痍軍人の人は、私に

「ありがとう」と言った。

 

少し大人になって

偽物の傷痍軍人がいたと書いてある本や、新聞記事も読んだ。

 

でも、

あの傷痍軍人は、両足の膝から先は無かった。

本物の傷痍軍人だったと思いたい。