本当に悲しい時は泣かない

父が、14年前に癌で亡くなった。

 

死に目に会えたとか、会えなかったとか言うけれど

私は、手を握って、目と目を合わせることができた。

 

亡くなる時は、手の力が、すーっと抜ける。

目の輝きが無くなる。

 

おとうさん、おとうさんと何度も呼んだ。

 

しかし、私は泣かなかった。

 

お通夜も泣かなかった。

葬式の時も泣かなかった。

 

その後も、毎日、淡々と過ごした。

 

そして、父が亡くなった時のことを

普通に話せた。

 

他の人に

人が亡くなる時は、

こんな風にして、亡くなるんだよ。

そう話せた。

 

半年くらい過ぎて

夢で、父のことを思って

泣いている自分自身の姿を見た。

 

目を覚ますと

目から涙が、溢れていた。

 

あ~俺は泣きたかったんだなと思った。

 

でも、それからは、泣くことはなかった。

 

今でも、父のことを思い出しても泣かない。

他の人に、父のことを話しても泣かない。

 

私は、父が齢を取ってから生まれた子供だから

父と同じ年齢になるのは

あと何年後くらいだなと思う。

 

そして、祖母が亡くなり

母も亡くなった。

 

泣くことはなかった。

 

多分、これからも泣くことはないと思う。

 

私が生まれた時、

父は何歳だったんだろう。

母は何歳だったのだろう。

祖母は何歳だったのだろう。

 

小学校に入学した時は

中学校に入学した時は

高校に入学した時は

大学に入学した時は

 

成人になった時は

結婚した時は

 

思い出の中で

自分が、あんなことをしていた時は

父が〇歳の時だったのか。

その時の、父と同じ年齢の時

自分の精神年齢は、子供だったなぁ。

などど思う。